えばでONE

04C
C.F (c.f@ijk.com)


『もう泣かないの』
『パパもママもいらないの』
『あたしは一人で生きるの』

 そう、最初はそう思ってた。
 でも、あるとき、公園で真嗣に会った。
 最初のころ、真嗣はずっと泣いていた。
 悲しい涙だった。
 誰かに見てほしい、そんな涙じゃなかった。
 本当の悲しさを知ってしまった涙。

 えーん、えーん

『あの子、みなしごなんですって』
『母親が事故に遭って、その事故の救援に向かった父親も、二人とも帰ってこなかったそうよ』

 えーん、えーん

 他人との関係を拒んでいたあたしだったけど、真嗣には抵抗感はなかった。
 そして、あたしは真嗣にハンカチを突きつけながら言った。

『ほら、もう泣かないの、男の子でしょ』

 顔を上げてあたしを見た真嗣は、あたしのハンカチで涙をふきながら言ったんだ。

『でも、みんな僕を置いて行ったんだ。
 父さんも母さんも、みんな僕を捨てて行ったんだ。
 永遠に続くと思ってたのに……
 永遠なんてなかったんだ』

 このとき思ったんだ。あたしを必要としてくれるかもしれないって。

『えいえんはあるよ』

 いつまでもあたしが真嗣を見ててあげる。永遠に。

 それからあたしは真嗣と一緒にいるようになった。
 最初は通学路で待ち合わせていたけど、あたしが預けられてる家の人は忙しくて、
 ほとんど毎日1人で朝ご飯を食べていることがわかると、
 真嗣は今までより早く施設を出て、あたしを起こしに来るようになった。
 そんなあたしたちを冷やかす奴もいた。
 もちろんそんなことを言う奴を許しはしなかったけど、予防策として今みたいな態度をとるようにした。

 高校に入ると真嗣は施設を出て、1人暮しをはじめた。
 垣根が1つ取り払われて、あたしは今まで以上に真嗣と一緒にいるようになった。
 家の人に干渉されるのは嫌なので、泊まったりはしなかったけど。
 朝は真嗣が起こしに来る。お弁当は真嗣の手作り。夕飯は真嗣のところで。

 でも、不安は消えなかった。
 あたしがどんな無茶をしても、真嗣は許してくれる。
 でも、真嗣はやさしいから、だからなのかもしれない。
 口では頼りない真嗣にあたしが構ってるということになってたけど、
 実際のところ、依存してるのはあたしのほうだ。
 見てくれる人が必要なのは、あたし。
 真嗣は見てくれる人なんて必要じゃないのだ。
 真嗣の悲しさを消すこと、それがあたしにできるのだろうか。

 そして、あたしは恐れてきた。
 真嗣に否定されることを。
 真嗣はあたしを必要としているのだろうか?





「明日香……その、前から、僕、明日香の事が……」

「好きだったんだ。だから……」

 うれしかった。

 最初、怒ったのは、みんなの前であんなことを言ったから。
 でも、そのうれしさはすぐに消えて、いつもの不安がよみがえった。
 そして、その不安はとうとう現実のものとなってしまった。

「あの、明日香、さっきのは仕方なくやったことで……その、怒ってたらごめん」

「はは……僕なんかに告白されても迷惑なだけだよね……」

 あたしを好きだなんて思ってない。
 あたしを必要としてない。

 あたしを頼ってよ。
 なんでもしてあげる。どんなことでも。
 だからあたしを必要としてよ。





『そんなことぜんぜん思ってないから』





 いやぁぁぁぁーーーーーーー!!!!







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