てぃ〜たら〜てぃ〜てぃ〜てぃらた〜 てぃ〜らてぃてぃてぃ〜(オープニング曲)


すくすくいぬふく「四月」


text by くわね(kuwane@fc4.so-net.ne.jp


 桜の花も散った頃。わたしは頭の上にチョビを載せて病院へ行きました。
 ペットショップのおねえさんに、予防接種をするように勧められたからです。
 予防接種をしないと、犬福は「のーてんき病」という病気にかかってしまうのだそうです。
 それがどんな病気かは知りませんが、病気にかかったらかわいそうなので近所の動物病院で、注射をしてもらうことにしました。
 少し古めかしい病院の建物の中。白衣を着た先生が注射針を刺すと、チョビは痛そうに「にょ〜」と大きな声をあげました。
 うん、これで大丈夫。だけど風邪には効かないから過信は禁物だよ。
 そう言った先生にお礼を言って、受付でお金を払うとわたしは病院を出ました。

 帰り道。
 私はチョビの散歩も兼ねて河原の方をまわって帰ることにしました。
 丸っこい体で、チョビは元気に土手の砂利道を走ります。
 ふと、何か感じたのかチョビが止まりました。
 精一杯に小さな四つの足を踏ん張って、日差しを浴びてきらきらと光る川の水面を、じっと見つめています。
 私もおつきあいして、水面を眺めました。
 すぐに、変化が現れました。
 ごごごごごご、という音と共に水中から緑色の物体が姿を現したのです。
 大きさは50センチぐらいでしょうか。下の方から炎を吹いて空中に浮かんでいます。
 その場に立ったままそれが動く先を目で追うと、懐かしい人がいました。
「長瀬主任!」
 普段より大きな声を出したわたしに気がつくと、少し驚いた顔をした長瀬主任はわたしの方に歩いてきました。
 主任は、足元に降り立った物体を「メカ福」だと説明してくれました。
 仕事の手すきに余った部品で冗談半分に作ったら、意外にも社内での受けが良かったので今度発売されることになったのだそうです。
 情報の処理などに関してはあるていどわたしや、わたしの姉妹たちの研究でうまれた技術も使ってあるらしく、まあ、そうだな、うん。遠い親戚って言っても間違いはないかな、ということでした。
 ところで、と主任は言いました。
 藤田君は優しくしてくれるか?おかしいところはないか?
 はいっ、浩之さんはいつも優しくしてくれます。体におかしいところもありません。
 わたしと主任は、少しのあいだ雑談をしました。
 そして、手を振ってお別れをしました。
 それじゃあ、次の定期点検で。長瀬主任はそういうと「メカ福」と一緒に川沿いを歩いていってしまいました。
 わたしは少しだけ、どうしてか寂しげに見える背中を見送りました。



つづく







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