幽霊喫茶へようこそ


text by くわね(kuwane@fc4.so-net.ne.jp


 放課後、廊下に出たところで芹香先輩に袖を引っ張られた。
 何かなと思ったら「今週の土曜日、放課後は暇ですか?」と聞いてきた。
 デートのお誘い。ではなくて、来週末の文化祭の準備を手伝って欲しいとのことだった。オカルト研の出し物の準備らしい。
 どうせ暇だし、何より先輩の頼み事を断るなんてことは考えられなかったから、俺は即座に首を縦に振った。
 それを見た先輩の顔がほころんだように見えて、少し嬉しかった。

 土曜日、俺はあかりと一緒にオカルト研の部室の前にいた。
 しばらくするとゆっくりとした歩みで先輩がやってきた。俺の隣に立つあかりに、?、という表情をしたので紹介をする。
「えっと。こいつは俺の幼なじみで神岸あかりっていうんだ。俺と違って手先とか器用だから、役に立つかと思って」
「はじめまして。神岸あかりです」
 そういって、ぺこり、とあかりが頭を下げ、それにあわせて先輩も、こくり、とうなずく。
 先輩は部室の鍵を開けると俺達を招き入れた。
 昼間だというのにあいかわらず薄暗い室内に、ラシャ紙などのらしい物体が見受けられた。
「で、仕事って言うのは?」
 俺が聞くと、いつも通り小さな声で先輩はいくつかの仕事を教えてくれた。それは、もののみごとに手先の器用さを要求される仕事ばかりだった。
 あかりを連れてきて良かったと思いつつ、はさみを片手に紙を切る。
「そういえば先輩、文化祭で何やるの?」
 占い、です。と小さな声。
「それと」
「それと?」
 ハーブティーを出そうと思います。と先輩は言った。
「わぁ、いいなぁ」
 と黒い布に器用に針を運びながらあかりが言う。
 だが、一つ気になることがあった。
 当日は先輩が全部一人でやるんだろうか、と。
 先輩の処理速度では、とてもじゃないがそんなことは絶対無理だと思った。
「先輩、当日はどうするの?手伝う?」
 それは幽霊部員の皆さんに手伝って貰いますから。先輩はさらりとそう言った。
「やっぱり、文化系って幽霊部員が多いんですか?」
 何も知らないあかりは暢気に言うが、違うのだ。
 オカルト研の幽霊部員は文字通りの幽霊部員なのだ。
「先輩、それはちょっと」
「………」
 だめですか?と目が言っていた。
「当日は俺と、あかりも手伝いますからそれだけはやめてください」







Go to Next
Return to Leaf SS
Return to Top