えばでONE

05D
りとん・ばい C.F (c.f@ijk.com)


「……綾波?なんか、綾波の知り合いって言う人が来てるんだけど……」
「玲ぃ〜久しぶり〜」
 真嗣の言葉をさえぎって、茶色の髪をした娘が玲の前に飛び出していく。
 そして、そのままの勢いで玲に抱き着いてる。
 いつもの嫌そうな顔をするかと思ったけど、戸惑ったような嬉しいような顔をしている玲の反応を見ると
 この娘が主張する「玲の親友兼幼馴染」というのは本当なのかもしれない。
 ……それにしても騒々しい娘ね。
 他所の制服を着た奴がこんな大騒ぎして目立たないはずはないのに。
 少しは遠慮とか自制とかを考えて欲しい。



 で、何でこんな事態になったかと言うと……
「ねぇねぇ、あなた達ってこの高校の人?」
 いきなり、茶色の髪をショートカットにしたあの娘が、校門の前で声をかけてきたのだった。
「うん。そうだけど」
「じゃさ、綾波玲って娘、知ってる?」
 真嗣が答えると、その娘は真嗣に近寄って言った。
「知ってるけど……」
 勢いに呑まれてしまっている真嗣に、彼女は更に更に真嗣に顔を近づける
 ほとんど、キス寸前。
「で、玲のクラスってどこ?」
 そう言って微笑む。
 おそらく真嗣の頭の中は、彼女の行動で思考停止寸前だろう。
 彼女の視線がちらりとあたしに向く、そして、真嗣に向けているのとは異なる種類の笑みを浮かべる。
 こいつ……確信犯ね。

「ちょっと真嗣!こんな得体の知らない奴に玲の事を話すつもり?」
「えっ?でも……」
 真嗣を我に返らせる。
 で、真嗣に罰を行うのはとりあえず後回しにして、例の娘に向き直る。
「大体ねぇ、あんた何物よ!
 人に物尋ねる前に名乗りなさいよね!」
 主導権を取るためにも、いつも以上の大声と勢いで言ってやる。
「え?そうね
 始めまして。隣の高校の霧島愛って言います。
 玲の幼馴染兼親友なの」
 あたしにではなく、真嗣に向かって、愛は言った。
「でね。今日はその玲に会いに来たんだけど
 ……真嗣君、玲のクラス知ってる?」
「えっ?なんで僕の名前を知ってるの?」
「さて、何故でしょう」
 そう言って、再び真嗣に接近している愛。
 またも真嗣は思考停止に陥りそうになる。
 さっき、あたしが呼んだでしょうが……まったく
 愛も許せないけど、真嗣の反応も気に入らない。
 真嗣で遊んでいいのは、あたしだけなんだから!

「と・に・か・く!
 あんた、玲に会いに来たんでしょ
 案内してやるから、来なさいよ」



 そう言うわけで、玲のところに愛を連れて行ったのだけど。

「それで、今日は……?」
「うん、近頃の玲、元気ないみたいだから、ちょっと来てみたんだ
 ほら、近頃電話ばっかりで、一月ぐらい直接会ってなかったでしょ?」
 たっぷり一分は抱き着いていた愛は、ようやく開放された玲の言葉に答えた。
「でも、少しは元気になったみたいで、良かったよ」

 そうして、互いの近況を話している二人は確かに親友や幼馴染と呼んで言い雰囲気だろう。
 愛の様子は、さっきまでみたいな小悪魔みたいな感じはまったく違うし、
 玲の表情もあたしたちが最近見る事が出来るようになったものと同じだった。

「さ、あんたも用事が済んだなら出て行きなさいよ」
 二人の話が一段落ついた様子なので愛に言い渡してやった。
 すると愛は玲に向かって、
「出てけって言ってるよ、玲」
「玲にじゃないわよっ!
 あんた、隣の高校の生徒でしょうが、教師に見つかったらどーすんのよ」
「そんなの黙ってれば、解らないわよ」
「他所の制服着てて、目立たないわけ無いでしょっ!」
「ねぇ、明日香。余計、目立ってるような気がするんだけど……」
 うっ
 真嗣の癖に痛いところ突くわね。
「と、とにかく、もう授業が始まるんだから、あんたも自分の学校に行きなさいよ」
「でも、もう間に合わないしぃ、今日はこの学校で授業受けよっと」
 愛。あたしにはあんたの発想が解らないわ……



追記:
  結局、愛はあたしたちの教室で授業を受けた。
  どーして、ばれないのよっ!







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