てぃ〜たら〜てぃ〜てぃ〜てぃらた〜 てぃ〜らてぃてぃてぃ〜(オープニング曲)
すくすくいぬふく「一月」
「ただいま〜」
一月のある日。そう言いながら玄関の扉を扉を開けると、マルチの「浩之さんおかえりなさーい」という声、ぱたぱたという足音、それに混じって「にょ」という変な音がした。
よくよくマルチを見ると、その頭の上には何か知らないが耳のついた丸っこい物体が器用に乗っていた。どうやら、それが「にょ」という音の発信源らしい。
「マルチ、頭の上の…それ……何?」
俺が靴も脱がずに聞くと、マルチは「あっ」と何かいたずらが見つかった子供のように頭の上のものを両手で押さえた。
「あの、えと、犬福って言うんです」
「うん、それで」
「今日お買い物に行ったときに駅前のペット屋さんで見つけて、とってもかわいくって」
「で、買って来ちゃったと」
こくん、とひとつうなずくと広げた両手の上にその「犬福」というらしい丸っこい物体をのせたマルチは、しゅんとうなだれた。
俺は靴を脱いで土間からあがると、さっきまで犬福が陣取っていたマルチの頭の上にぽんと手を載せた。
「飼うんだったら、ちゃんと最後まで責任もって飼うんだぞ」
「え?」
「だからぁ、買ってきちゃったもの捨ててこさせるわけにもいかないだろう」
「ひろゆきさん………」
久々にマルチが泣きそうになったので、俺はそれを制して荷物を置くために自分の部屋へと向かった。
生き物と接することは、マルチにとってもプラスになるだろう、という考えも少しあった。
リビングに入ってからマルチにその犬福を良く見せて貰った。
人を怖がらないらしく、俺が顔を近づけてもそいつは「にょ」という変な声を上げて笑った(たぶん)。
ちょうど大福に耳としっぽがついたようなかたちの犬福には、足がなかった。
「マルチ、こいつ足は?」
「あんなものただの飾りなんだそうです」
「上の人はそれが分からんのです、か」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
地元UHF局での再放送を伊達に全部ビデオに撮っていたわけではなく、思わずセリフを続けてしまう俺。
「で、名前は?」
「まだ決まってないんです」
「マルチが買ってきたんだから、マルチが決めればいいよ」
そう言われたマルチは「はい!」といつものように元気良く答えると、目を閉じて考えるような素振りを見せた。
「ああ、トンヌラとゲレゲレは禁止な」
ふと思いついて俺が言うと、マルチはえええっ、という表情になって再び考え込んだ。ドンピシャリだったようだ。
結局、紆余曲折を経てそいつの名前は「チョビ」に決まった。
なんか鶏や猫に負けそうな名前だなと思ったが、マルチの決めたことだしな。
そんなこんなで、俺とマルチの生活に一匹が仲間として加わった。
つづくかも
###覚え書き###
いや、初めて犬福をやったときにですね。思ったんです。
マルチとセットにすると可愛いだろうなぁって(笑)
実はそれだけでこれを書きました(^-^;
本当に続くのかどうかはネタの降ってき方次第。
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