2012.2.14

「指令塔を見たか?
 ここがどこかも忘れて、皆うかれているな。
 良いのか? 碇」
「構わん。たまには息抜きも必要だろう」
「おまえが良いと言うなら問題ないのだが……
 それはともかく、午後には席を外すぞ」

「教会か?」

「……そうだ」

「偽善だな」

「……お前ほどではないさ」





2.14

C.F(c.f@ijk.com)


 2022.2.14

 世間ではバレンタインデーの午後。
 僕は午前中に授業を済ませて、研究室でレポートを書いていた。
 今日はこれからアスカと出かけるつもり。
 レイも一緒にと誘ったのだが、「邪魔者になりたくないから」と断られてしまった。
 別にそういうわけじゃないのになぁ。

「ども〜、シンジ居ますか?」

 とか言ってると、アスカが来た様子。

「おっ、アスカちゃんじゃない。碇なら奥に居るよ」
「は〜い、んじゃ、おじゃましま〜す」
「ところで、やっぱり今日はデートかい?」
「そうなんですよ、シンジがどうしても今日じゃなきゃ駄目ってうるさくて」

 そりゃ僕から誘ったのは確かだけど……
 そういう言い方すると……まぁ、いいけど





「シンジ」
 僕の横に立ったアスカがレポートを覗き込んできた。
「何書いてるの?」
「ん?
 文人のレポートだよ
 先に仕上げとかないと、予定が詰まってるからね」
「ふーん
 で、行くんでしょ」
「うん。ちょっと待ってね。片付けるから」

 ノートパソコンをサスペンドして、鞄に放り込む。
 机の上の資料をまとめて棚にさして、上着をとる。

「じゃ、行こうか」





 大学から環状線で10分、そこからリニアに乗り換えて1時間。
 一般の人はほとんど降りることのない駅。
 旧東京・新宿駅。
 僕たちは第三監視塔、元の東京都庁舎に向かった。

 常駐する職員は居ない。
 第2東京からの遠隔操作ですべてまかなわれる。
 調査研究のためのゲートであるリニアの旧新宿駅から地下通路で繋がっているので
 放棄区域の中で唯一許可を取らずに入れるところだけど
 僕たち以外に人影はない。





「やっぱり、忘れられていることは無かったことと同じなのかな?」
 塔の最上階に立って、水没した都市を見ている時、アスカがつぶやいた。
「どうなのかな……
 思い出しなさい、知りなさいとか言うのは、何か違う気もするよね」
「でも……」
「でも、僕たちは憶えている、知っている。
 そして、ここに来る。
 それで良いんじゃないかな」

 結局、それ自体は始まりの終わりに過ぎないけど
 それでも今日はあの時代の象徴だから、ここに来たかった。





「そう言えば、今日、レイはどうしたの?」
 帰りのリニアの車内でアスカが聞いてきた。
「第四芦ノ湖に行くって言ってたよ
 父さんや……カヲル君がいるから……」
「そっか……あの子も……
 でも、今日は夕食一緒なんでしょ?」
「そのはずだよ。
 夕方には帰るって言ってたから」

「じゃ、期待してなさいよね。
 今日は二人とも特製なんだから」
 アスカはにっこりと笑ってるけど……
 特大ケーキが2つ、どっちを先に食べるかでもめるんだろうなぁ










2001.2.14
バレンタイン停戦協定


















 2.14 SSです。
 らぶらぶな物は皆さん書かれていますからね
 背景設定は「Oramus Filis」や「I Wish ...」と同じです。
 註:文人=文化人類学です



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