クリスマスの一団
今年も終わりに近づいてここ数日はとても寒くなっている。
雪が降るまではいっていないが、それでもきつい寒さだ。
そして、今日はクリスマスイブである。
予定では茜とのラブラブ〜な予定だったが、長森・柚木・澪連合軍によって夢敗れた。
やむなく、みんなでわいわいなパーティーに気持ちを切り替えた。
それはそれで楽しみだった。
……のに……
「ックシュン!!」
風邪をひいていた。
「あれ、折原君。風邪ひいたの?」
くしゃみをしたのとほぼ同時に柚木が家に入り込んできた。
家に入るときはお邪魔しますぐらい言えんのかこいつは。
その後から長森、茜、澪と続いている。
どっかで待ち合わせて買い出ししてきたらしい。
「浩平、また腹出して寝てたりしたんでしょ」
これは長森。
うう、返す言葉が無い。
俺は黙って毛布をかぶってこたつで丸まった。
「さて、じゃ折原君はおいといてパーティー始めまようか」
「ちょっと待て、柚木っ」
毛布を払いのけて跳ね起きる。
「病人は寝てなさいよ」
うがぁ
「パーティーぐらいはできる」
「くしゃみをケーキにぶちまけるとかしそうだからやだ」
こいつは……
俺は茜に助けを求めた。
「茜、このバカなんとかしてくれ」
「ちょっと、茜。そういうケーキ食べたい?」
すかさず柚木も茜に余計なことを言いやがる。
茜はちょっと黙ったまましばらく考えた後、俺の方にやってきて払いのけた毛布を俺にかけてくれた。
「ゆっくりと、休んでいてください」
涙が出そうだった。
毛布をかけてくれる心配りはうれしいが、結局のけ者だ。
「ねぇ……今日はやめて明日にしない?」
黙って成り行きを見守っていた長森がそんな提案をした。
ちなみに澪ははらはらしながら見ていたようだ。
「じつはね。ケーキがないの。手に入らなかったの。明日なら安くなってるだろうし、材料買ってきて里村さんに作ってもらってもいいし……」
長森の説明に柚木も考え込んだ。
「ケーキないの? そうねぇ……やっぱケーキは最低限必要よね」
「はい……」
茜もそれには同意見のようだ。
「澪ちゃんもそれでいい?」
澪は『うんっ』とうなずいた。
澪もケーキなしは嫌なようだ。
「ということで、明日までに風邪治さないと仲間に入れたげないからね」
柚木は冷酷に俺に言い放った。
「じゃ、今日はかえろっか……じゃあね浩平」
長森がそう言って部屋を出ていく。
澪はそれにくっついて……そのあとから柚木……最後に茜……
……
病人の俺を置いてみんな帰るのか……薄情者がぁ……
「茜ぇ」
俺は最後に出て行こうとした茜を呼び止めた。
茜はこっちに振りかえる。
「俺、風邪ひいてるんだ」
「見れば分かります」
「つらいんだ」
「はい」
「由起子さんは今日も仕事で帰ってこないんだ」
「……分かりました」
茜はそういって柚木たちに一言かけると、部屋に戻ってきてくれた。
よし、成功。
風邪をひいているのは残念だが、とりあえず茜と二人きりのクリスマスだ。
これはこれでいいだろう。
とりあえず、少しだけ幸せを感じていた。
翌日の、夕方……
再び、長森・柚木・澪がやってきた。
「やっほ。折原君。風邪なおった?」
例によって予告も無く家に入り込んでリビングにはいるなりこれだ。
まったくこいつは……
「おう、なおったぞ」
「ちぇっ」
「こら、今何言った! 柚木!」
「気のせい、気のせい」
そう言ってこたつの上に持ってきたビニール袋を置く。
ケーキの材料らしい。
おい、こんな所に置くな。
「材料はキッチンにもってくね」
長森が手に持っていた袋をもってキッチンに行く。
澪も柚木がこたつの上に置いた袋の一つを取ると長森に続いた。
それを見ても柚木は手伝おうとはしない。
まぁ……いいけどよ……
俺は柚木に話しかけた。
「でな……俺は完治したんだが、今度は茜が風邪ひいちゃってな」
「えーーなにそれ。ケーキだれがつくるのよ」
親友(なのか?)の病状よりケーキの心配する柚木。
「とりあえず長森……」
「私にはむりだよ〜」
長森がそう言いながら戻ってきた。
話の内容は聞こえていたらしい。
でも、茜の指示で長森が作ればなんとかなるかも。
……トントン……
階段を降りる音。
俺の部屋で寝ていた茜が気づいて降りてきたようだ。
茜がリビングに入ってきた。
毛布を引きずっている。
「茜、大丈夫?」
「あまり大丈夫じゃないです」
まだ、顔色が良くないな……
「まったく、折原君にうつされたんじゃないの?」
ぎく
「はい、浩平のせいです」
「やっぱり……」
柚木は俺を睨み付けた。
「なんで茜にうつすのよ。ケーキどうしてくれるの?」
こいつはやっぱりケーキの方が重要か。
なんでっていわれても困るが。
「いやぁ……まぁ……昨日はクリスマスイブだったしな……やっぱりさぁ」
病み上がりのせいかなんか変な事を言ってしまった。
茜は赤い顔を更に真っ赤にする。
「はぁっ」
長森のため息が聞こえた。
「もういいわ。勝手にしてなさいよ……」
柚木も茜と俺とを交互に見て、あきれたようだ。
「まったく、浩平は風邪ひいて熱あるのに無茶するんだから。私のときもそうだったけど」
「長森っ!」
慌てて長森の言葉を遮る。
長森も自分が言ってしまったことに気づいて両手で口をふさぐ。
だが、もう遅かった。
ああ……
「ねね、今のどういう事?」
柚木が興味津々といった顔で迫ってくる。
「私のとき、ってなに? ひょっとして……」
「う、うるさい! 柚木あっちいけっ」
なんとか柚木を追い払おうとしてると、その先で茜がこたつの上に残っていた袋から生クリームを取り出してこっちに歩いてくるのが見えた。
……ああぁぁぁ……
結局、今日もケーキは食べることが出来なかった。
食べたのは生クリームだけだった。
あとがき〜
うん
クリスマスネタです。
基本はいつも通り茜シナリオらぶらぶ設定なんですが、今回の設定は瑞佳シナリオがからんでます。
たまにはこういうのもいいな(^^;
タイトルは……七瀬(謎)
<管理人より>
「彗星ちごや」さん、「おねSS‐Links」さんの管理人さん、いたちんさんにクリスマス競作へ参加していただきました。
外部から(くわね氏や涼氏は前から友人なので)の始めての投稿です。
ありがとうございました m(__)m
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