大雨の空き地
ばたばたばた・・・
「間に合ったぁ」
俺はいつものようにぎりぎりで教室に駆け込んだ。
その後ろからは長森が必死で走ってくる。
少し遅れて、その長森も教室についた。
「七瀬。タオル」
「あんたのはないわよ」
そう言って長森にタオルを差し出した。
・・・冗談でいったのだが、本当にタオルを(他人の分まで?)もってやがった。
しかも、俺には無いらしい。
「すごい雨だよね」
長森が言う。
今日は朝起きたらどしゃぶりだった。
梅雨の真っ只中だし、雨が降るのは別に気にしないのだが。
さすがに、これほどの大雨だと大変だ。
川が氾濫する恐れもあるな・・・これだけ大雨だと・・・
長森は天気予報で知っていたらしく少し早く俺を起こしに来たが、学校に着くのは結局ぎりぎりの時間になってしまった。
理由は・・・長森のせいにしておこう。
当然傘は持っていたが、走ったせいもあってかなり濡れてしまった。
「今日はこのまま休校になるかもしれないって噂よ」
大雨洪水警報まで出てるしね、と付け加える。
「なにっ。じゃぁ、学校まで来た俺の苦労はどうしてくれる」
「知らないわよ。あんただけじゃないし」
つれない七瀬の言葉に、俺は観念して自分の席についた。
大雨のせいか、どうもテンションがあがらない。
ふと、時計を見る。
いつもなら髭が来ている時間。
今日を休みにするかどうかで職員室で話し合ってるんだろう。
そのまま教室を眺める。
ふと、1つの席が目についた。
誰もいない席。
髭が来ていないので、自分の席についていない奴も多いのだが・・・
教室中を見回しても、彼女はいなかった。
ふと、頭の中に空き地の風景が浮かんだ。
まさか・・・
俺はすぐに立ち上がって教室を飛び出す。
長森がなにか言った気がするが無視。
靴を履き替え、傘を持つと学校を抜け出した。
そして、俺は空き地にやってきた。
そこに、やはり彼女は居た。
「茜・・・」
茜がゆっくりと顔をこっちに向けた。
「なにしてるんだ?」
「・・・待ってるんです」
いつかと同じように、茜はそう答えた。
・・・こんな雨の中でか?
そう言おうとしたけど、言えなかった。
その答えはもう聞いていた。
でも茜は俺の表情から言いたかったことが分かったのか、それに答える。
「あの人、傘を持ってなかったから・・・」
「じゃぁ・・・それは何なんだ?」
俺は茜が座っているそれを指差した。
下を向いてゆっくりと俺が指したそれを見る。
そして、またゆっくりと顔を起こすと、俺の顔を見て言った。
「あの人、泳げなかったから・・・」
茜はどこから手に入れたのかわからないようなゴムボートに座っていた。
空き地の、地面の上で。
あとがき〜
梅雨で考えたらこんなのになりました(^^;
外が大雨だったもので。
SSとしてはつまらないと思いますが・・・
そんな時は、空き地でゴムボートに座って傘さしている茜を想像してください。
いいよね〜(謎)
Return to Special SS
Return to Top