_ 函館を舞台にしたきわめて恩田陸的なミステリー。シリーズとしてはMAZEに連なるもののようだが、読んでみるとむしろ「まひるの月を追いかけて」に似た感触がある。
_ ちょうど9月に函館に行ったばかりなので、イメージが積み重なって、良かった。そう言えば「まひるの月〜」の奈良と明日香にも以前行った事があったか。
_ もっとも、恩田の描く土地は「そこにあって、そこにないもの」といった感じがあって、例えば「六番目の小夜子」や「球形の季節」の東北の地方都市風の街も、確かに知っている感じだが、やはりどこにも存在しないものなのだ。
_ 経験したことのない世界(「麦の海に沈む果実」の世界)にノスタルジーを感じるような矛盾と、それは似ている。読者の経験に訴えながら、別世界を構築していくような感触である。
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